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2017/12/12

森を最大限に有効活用し環境も守る

Next Commons Lab南三陸

町の将来を見据えた「エナジーフォレスト森の力を活かしきる1」プロジェクトで持続可能な自立分散型の地域モデルを目指す

Next Commons Lab南三陸では、「エナジーフォレスト森の力を活かしきる1」として、ペレットエネルギーの地産地消化にチャレンジしながら、最終的には共同創業や事業展開を目指すマネージャーを募集しています。
今回は、プロジェクトパートナーである合同会社MMR代表の佐藤太一さんと工学博士でありイノベーションコーディネーター・合同会社イーツーエヌラボの代表でもある新井元行さんのお二人にこのプロジェクトの社会的インパクトと将来性についてお話を伺います。

先ずは今回のメインテーマでもある、エナジーフォレスト1がもたらすダイレクトな社会的インパクトについての可能性をお伺いしたいのですが。

佐藤さん:弊社、合同会社MMRは主にペレット事業関連をやっていまして、地域の未利用資源をどうやって活用していくかを探求している会社です。 また、ここ南三陸町でもバイオマス構想都市計画としてペレット事業を行っていまして、 弊社がその活動をお手伝いしています。
現状はペレットの卸売りがメインなので、いずれはこの土地で生産できたら良いなと考えています。ペレットは、木を切ったときにでる廃材を材料としてできるので、林業目線から見るとても魅力的なんです。なぜかというと、50年かけて育てた木を建材として売ると一本4,000円くらいでかなり安いという背景があって。50年かけてたったそれだけなんですよ。しかも余る部分もでてくる。だから「その部分をいかに有効活用できるか」ということが林業にとってかなり重要になってきます。
また、南三陸には7割ほどの手入れがされていない山というのもあって。山の働きを維持するためとそこにある建材にならない木材を有効活用することも大きな課題となっています。
こういった現状からペレットというのが機能すれば、これらの山の問題解決になるかもしれないという思いがあります。

そうなんですね。例えば、このペレットのアイデアが南三陸で実現したとして、そのモデルというかノウハウは、他の地域でも再現していくことが可能なのですか?

佐藤さん:そうですね。一回モデル化することで広げることはできると思います。
ただ、このエナジーフォレスト1というのは、そこから先の部分も視野に入れて動こうとしています。未利用資源をペレットとして製造するというモデルの部分だけではなく、それよりもさらに先の部分で、もっと大切というか実現したいことがあって…それについては専門家の新井さんからお話があると思うんですが!…(笑)

新井さん:あはは!わかりました。佐藤さんが言ったように、林業を通して山から得られる資源というのがあって、それを得られるようにする一方で、山の手入れもきちんとしないといけない。なぜかというと、その山の植生というものが川を下って、例えば、海で育っている牡蠣の味を決めたりする。
なので、そういう大きなサイクルというのをきちんと理解をしながらナレッジを積み重ねて、そのノウハウを他の地域でも展開していく。そのような拠点になることをいま南三陸の地域では目指しています。
だから社会的インパクトと言っているんだけど、それだけではなくて。自然環境を大事にして、その中で人間が生きているというところまで全て含めて、社会というのをきちんと捉える。そして、その影響を理解しながら本来あるべき姿に整えていきましょう。あるいは、新しい技術を使ってよりよい将来像を作っていきましょう。というのが、南三陸のプロジェクトに共通している点としてあります。

今回の林業という視点でいくと、まず山を整えつつ、輸送コストがぐっと下げれるようなもの(ペレット)に変換をする。そして、それをどう使っていくかということを考えた上で、山から得られる資源を全て有効活用しましょう。という位置づけで活動をしている。持続可能な社会のために人間サイドからなにができるのか?というのをチャレンジしていきたい。そんなことをいつも佐藤さんと二人で話しています。ね、佐藤さん(笑)

佐藤さん:そうなんです!(笑)

それではこの南三陸の森というのは、現状すでにそういった新しいモデルを構築していくのに適した環境だということなのでしょうか?

佐藤さん:そうですねぇ。良い山と悪い山がどっちも存在するという点と、標高が低い山が多いので、他の地域よりもアクセスが容易で活用しやすいという点が南三陸の利点です。また、南三陸は分水嶺に囲まれているので流域が町内で完結している。町内の77%が山林なので、研究をしたり現状を探るという部分でとてもやりやすい地形となっているんです 。そういう意味で、良い環境と言えます。

現在、南三陸ではすでにペレットを取り入れていて、町内のみの需要でも年間約250トンはあると聞きました。このペレットをどのように有効活用していけば、町の未来を築く起爆剤(きっかけ)になると思いますか?

新井さん:エネルギー開発というのは、どういう風な有効活用をするかというのが、前提にあることが大事です。エネルギー技術の数ある選択肢の中からどれを使うかということについては、その地域の需要もしっかり見極めて、根付くような、そして大きな効果も得られるような技術を選んでいかないといけないんです。
南三陸のケースでは、水産加工業が町の産業として金額的にも大きな部分を占めているので、そこでエネルギーコストをきちんと下げられるような熱と電力の供給をしたい。その上で、林業の問題と掛け合わせて、それにあったペレットエネルギーの使い方をしていく。
地域の人がメインでお金を得ている部分や大きくお金が動いている産業を選んで、そこでしっかりとコストを抑え、みなさんの給料が上がるような仕組みを作っていくことが重要です。また、産業を起点としつつも実生活の側にもメリットが生まれるような、両方の視点からエネルギーを供給していく必要があるのかなと思っています。
お金が回らなければ、その事業自体が持続可能じゃなくなってしまう。この収益性という所にフォーカスしてペレットを有効活用できれば、町の未来に繋がっていくのではないかと思っています。

ちなみにペレットというのは、エネルギーとなる他の電力や灯油などよりも安く手に入れることができるのでしょうか?

佐藤さん:安くはないですね。現状でいうと、とても難しいジャンルだと思っています。ただ、もしこれがモデル化すれば、日本だけじゃなく世界においてかなり有益なメソッドになります。

ペレットは価格も高めで難しい。それでも資源の有効活用や将来的な像を考えたときに、チャレンジしたいと思った点はなんですか?

佐藤さん:実はペレットにこだわるという気持ちはそんなになくて。ただ、ペレットは一番輸送コストが安価でかさばらないですし、ストーブなど家庭で使う部分でも煙や煙突の心配がなく使用ができるので、他の暖房器具に代用できるイメージなんです。
ただ、ペレットの実現はかなりハードルが高い。でもそれを越えれば、木質チップとか蒔とかにも応用が利いてくる。というのも、ペレットというのは、蒔(残材)を破砕して木質チップを加工してできるものなので、自然と多様な方法で考えることが必要になってくる。その点でペレットを題材にしたというのがあります。
理想としてはカスケード利用を考えていて。要はペレット、チップ、蒔、それ全てが活用できるベースになればよいなと。

新井さん:そうですね。佐藤さんが言っている「あまりこだわっていない」というのが大きなポイントですね。
ペレットは一番選択肢として持てるという点と、輸送コストがかなり下げられるという点で確信を持っているので、それを起点にしているんですけど。実際に進めていくと、そもそも発電所を山の下に置いたらいいんじゃないかとか、材木をそのまま持ってきて加工するのがベストだなど、用途によって変わってくると思うんです。そのときの使い勝手に一番沿った形でできればと思っているので、もしかしたらペレットという方向性が変わるかもしれない。

佐藤さん:そうですね。そしてあくまで山側の目線でいうと、今現状、日本の林業というのは自立産業じゃなくて補助金に頼っています。でも、そこを地域のエネルギー利用と組み合わせることで、自立産業化できると実証できれば、林業にとってとても有益であるし、林業そのものが先進的なビジネスとして成り立つのではという想いもあって。それができるだけでもかなり大きな変化になると思っています。これって、国政としても課題になっている部分でもあるので、そこにちゃんと提案や証明できるだけでも、かなりのインパクトかなとは思います。

なるほど。このプロジェクトには二つの側面があるんですね。一つは、林業の方にとってダイレクトに将来的な部分での可能性を広げることができ、新しいビジネスになる。二つめは、そのプロジェクト実現のためのノウハウを他の地域や国に有効活用していくことができる。これら二つの側面があるから、今回新井さんと佐藤さんがダッグを組んだというところに繋がっているんですね。

現在「エナジーフォレスト森の力を活かしきる1」ではマネージャーを募集しています。このポジションに着任した際のお二人との協働の仕方やこの職に適していると思う人物像などのイメージを聞かせてください。

新井さん:佐藤さん、どんな人と一緒に働きたいですか?

佐藤さん:そうですね。まずは、持続可能な自立分散型の町を目指すというビジョンの共有ができる人がいいなと思っています。あとは、山と里と海のつながりをちゃんと理解してくれる人。林業と町側のビジョンや供給側と利用する側の間に立って、どちらのバランスもきちんと考えられる人がいいなと。そういう素質がある人じゃないと…いやだな!(笑)…というか困るかなと思っているんですけど。事業をまとめてくれて、行動力を持って活動してくれる人が私たちには必要だなと思っています。
この事業はどうしても実現したいと思っているので、そのための努力や協力は惜しまずに提供していきたいと思っています。ですので、大きなリスクを背負わない形でのマネージャーという立場でも良いですし、弊社と共同創業するということも選択肢としてあります。また、事業を独立して行いたいという想いがあれば、その方向で全面バックアップしていくという気持ちでいます。

新井さん:アイデアをドライブしてくれる人がいると良いですね。ビジョンをきちんと共有してくれて、いろんな関係者とのコミュニケーションも得意であれば嬉しいけども、まずは行動力が一番で、トライアンドエラーでガンガンやってくれる人。

佐藤さん:そう。全く知識がなくても努力次第!

新井さん:事業を作っていく際の必要な考え方とか、調べなくちゃいけないことなどに関しては僕からアドバイスできますし、具体的な現状や資金面などの判断に繋がる部分では佐藤さんがアドバイスしてくれます。
外枠と中身の必要なナレッジという点で提供できるものがすでに揃っているので、あとはそれをトライアンドエラーをもって、何回もどんどん回していくことができる人が必要なんじゃないかなと思っています。

佐藤さん:チャレンジを怖がらない人。そういう人にきて欲しいなと思っています。

(文・編集=佐々木久枝 宮城県出身・海外在住 2011年より執筆・編集・取材・翻訳に携わる。英仏話者。今後ますます多様化していく生き方・働き方に興味がありライターとして関わった情報が人々の役に立ってほしいという思いで執筆・編集に取り組んでいる。)